〈7〉 和服の歩き方
和服は着慣れていないとミスマッチな歩き方になってしまいます。
和服なら、足元はやや内股、歩幅は小さくひざ下から振り出す程度で歩きます。すそが開かないくらいの歩幅です。草履は足指が動きやすいので、蹴り出しのときにややゆっくり、そして丁寧に蹴ります。ひざは、適度に曲げて歩くように意識します。
和服の日は「脚の長さが、ひざ下に変わってしまった」とインプットして歩くといいでしょう。ひざ下の動きだけで歩くことで「衣擦(きぬずれ)」の微かな音が聞こえ、とても色っぽく感じられます。
頭と肩と腰はまったく位置を変えず、そのまま前に移動する感じです。首の後方のうなじを伸ばすようなイメージで、やや前傾にします。視線は3メートル前の路面を見るくらいでいいでしょう。
夏になると浴衣を着る機会もあります。ひざ下のみで歩く感じは和服と同じですが、浴衣はカジュアルな和装です。さらに、足元は下駄になります。そのため、蹴り出しをやや早くし、軽やかさを加えます。首は前傾をあまり意識せず、上に伸ばして、しかし、視線だけは(洋装より)下に向けます。5メートルほど前を見るといいでしょう。
よくも悪くも、和服は着ているだけで目立ちます。歩き方が適していないと美しいどころか、がさつな動作は滑稽にさえ見えてしまいます。和服の日は、心も歩き方もしとやかに……。